最終回スペシャル クルーズの服装と費用
2008/12/21「大海原からのEメ−ル」は、前回で、最終寄港地グアムを前にして一応終わったのですが、それは、飛鳥船内のEメールコーナーが4月末で閉鎖されたからです。
今回は、航海最後の5日ほどについてのご報告と、この紀行文の連載中に読者の方々から寄せられたご質問で、まだお答えしていなかった事を補足させて頂きます。
■グアム‥‥日本から一番近い常夏のリゾートですから、既に旅行された方も多いと思います。私も以前、ビーチ、潜水艦や実弾射撃など体験していますが、今回は、オプショナルツアーの中から、「スターサンドビーチツアー」を選びました。この旅で最後のビーチリゾートだし、そこへのアプローチが面白そうだったからです。南部の港から島の最北端にあるスターサンドビーチまでは、バスで行くのですが、なんと、アンダーソン空軍基地のゲートを入って行き、海岸に達すると、水陸両用の四輪駆動車に乗り換えて、外洋の波が打ち寄せている岬の岩礁の浅瀬を乗り越えて行くのです。広く、設備の整った砂浜が広がっていて、シュノーケリングも出来ますので、早速試みましたが、太平洋の外海に面しているので、波が荒く、あまり快適なシュノーケリングは出来ません。やはり、モルジブやボラボラのように環礁が自然の防波堤となっている中が楽しめます。
グアムを出航するといよいよあとはまっしぐらに日本です。まず現われる久し振りの日本は、硫黄島です。右舷間近に見える島の姿は穏やかで、太平洋戦争末期の凄惨な激戦地の面影はありません。横浜まであと1,200km余り、4日近く掛かるここがもう東京都か!見ているとヘリコプターが飛び上がって来て、飛鳥を歓迎するように、上空を旋回しはじめました。船長のアナウンスで、無線の応答で海上自衛隊のレスキュー隊のヘリとの事、客が一斉に手を振るとヘリも機体を揺すって答えて行きました。こんな孤島で勤務している自衛隊員も居るのかと再認識しました。
■孀婦岩(そうふがん)‥‥海面から突如99mもの高さに蝋燭のように突き出ている岩。東京都に、640kmはるか太平洋の真中、日本の領土にこんな岩があるのを、皆さんご存知でしたか?船長のサービスで、周囲を一周し、じっくり見ることが出来ました。次に見えてくるのは鳥島です。南斜面に白いアホウ鳥の群生しているのがが見えました。
5月2日最後のフォーマルナイト(後記参照)。下船荷造りの関係で帰着2日前に設定されたとか。ダンスタイムにも客の皆さんも幹部クルーもホットしたゆとりが感じられます。もう既に皆さん荷造りも進んでいる様子。宅配便は3000個に達するとか。大きいものでは高さ2mもあろうかというキリンの置物。ケニヤのモンバサ港で現地人から買ったものでしょうがそれを置くスペースのあるお宅なのでしょうね。
5月3日夜は「クルーショウ」つまりキャプテンが寅さんを演じる「男はつらいよ」はじめ、男女クルー総出の歌あり、踊りあり、マジックあり、客のチームも何組も出演して最後の夜が盛り上がりました。
5月4日起きると、観音崎灯台、久里浜の大煙突。快晴。ああ、帰ってきたのだなと実感。一ヶ月前から有志が共同でつくりはじめ、白布に3色のリボンで「2001年南半球一周クルーズ ありがとう」と言う文字を縫いつけた横断幕がデッキの手摺の外側に取り付けられました。用意の良いおじいちゃんが、出迎えの孫の為にでしょうか、手摺に取り付けた大きな鯉幟がはためいています。そう言えば明日は端午の節句。デッキではあちこちで別れを惜しむ光景、仲良くなった奥さん同士が抱き合って涙、涙。ランドマークタワーが見え、ベイブリッジをくぐり、いよいよ着岸。埠頭には出迎えの家族が溢れんばかりです。手を振っている孫の姿が見え、やがて滲みました。
クルーズの紀行文連載の間に、最も多くあったご質問は、「着るものの用意が大変では?」と「お金はいくらかかるの?」でしたので最後に追記させていただきます。
■服装‥‥船内生活では、その夜の雰囲気を盛り上げる目的で「ドレスコード」(服装指定)があり、三種類の服装が決められていて、乗船前に配布される予定表でカレンダーに示されています。2001年の世界一周クルーズ100日間で、フォーマル6回、インフォーマル13回、カジュアル81回でした。日中は普段通りのカジュアルな服装で、夕食以後パブリックスペースでは、前日配布の船内新聞で示される、「ドレスコード」に従った服装になります。
<カジュアル>
男性:襟付きのシャツ、スラックス。
女性:ブラウス、スカートなど (Tシャツ、ジーンズ、半パンツ、サンダル、ゴム草履、下駄等は禁止)
<インフォーマル>
男性:ス−ツ、ジャケット等にネクタイ。
女性:ワンピース、ツーピース、和服等
<フォーマル>
男性:ダークスーツ、タキシード等。
女性:ドレッシーなスーツ、カクテルドレス、イブニング、和服(訪問着、付下げ等)
のように決められてます。従って我々の生活と非日常になる部分は100日中6日のみの「フォーマルデイ」といえましょう。お洒落を楽しみたい人はそれぞれ、日常も含めよくもあんなにと言うくらいに、毎日着るものが変る人もいます。フォーマルデイに、男性でもタキシードは勿論、紋付羽織袴の人もいました。私は、タキシードを買ってもこの先一生で着る事は殆ど考えられないので、手持ちの略礼服に、蝶タイとカマーバンドのセットを買って間に合わせましたが、別に引け目は感じませんでした。家内は、フォーマルで女性の皆さんが楽しんでお洒落しているのを見て、かなり悔やんでいました。というのは、荷物が多くなりすぎるのを怖れて、控えめにしてしまったとのことです。宅配便があるのですから、有りっ丈をもって来れば、組み合わせで、もっともっと楽しめたのにというのです。しかし、彼女なりに、持参した衣装の組み合わせで楽しんだようです。
そのほかに、乗船前に配布された予定表の「エンターテイメントガイド」に、船上でのイベントに合わせて、上記カジュアルデイに、下記のような予定があるので、各自で予め用意してあれば、雰囲気が盛り上がる (強制ではない)とありました。これこそ<非日常>でしょう。
*アフリカンデッキディナー…アニマル柄やジャングルをイメージした装い。
*マスカレード カジノ…仮装で楽しむ思い思いの趣向のコスチュ−ム。
*アルゼンチンナイト…情熱的タンゴをイメージして赤と黒を服装の一部に。
*ブラジル サンバカーニバル…ブラジル国旗の、黄、緑を取り入れた衣装。
*カリビアン デッキディナー…原色の花柄、フルーツ柄など陽気で明るく。
*盆踊り大会…浴衣をお持ちの方はお召しください。(安全上下駄は禁止)
*ポリネシアン デッキディナー…アロハシャツ、ムームーなど。
フォーマルデイにキャプテンと
我々は、年齢などこの際忘れて、こういう企画に乗っかって楽しんじゃおうと出きるだけ準備をして行きました。たとえば、マスカレードの仮装用に、デパートの、イベント用品売り場で、仮面、付け髭、豹柄のタイツなどを求め、船で用意したグッズの中から猫の被り物を借りて、雄・雌の「キャッツ」の扮装で我々自身楽しみ、又、好評でした。フォーマルデイのディナーの前にはホールでのアペリティフタイムや、ダンスタイムがあり、優雅に着飾った船客や、礼装のキャプテンやクルーが談笑し優雅にスローテンポのブルースなどを踊っている情景は、「今、日本の国内でこんなに贅沢な雰囲気が他にあるだろうか」という気さえしました。女性(といっても皆さんかなりの年配ですが、)お洒落を楽しみ、お洒落の上手な人も多いなかで、特に印象深かったのは、4月始め頃の太平洋上でのフォーマルに、ナント!薄墨で描いた桜の柄の着物の上品な女性。私の初めて「桜を見ない年」となる航海。あらかじめ、ここまで計算して準備してきた「本当のお洒落」だと、そのセンスの良さに感心しました。
■費用‥‥端的に言って、我々の費用は、土産物を除き、一人当たり約500万円でした。内訳は、船賃(Fステートルーム)早期申込み割引代金370万円とオプショナルツアー代金約130万円です。客室グレードは全7段階、最高1,600万円(2室、60.4m2)から最低350万円(46室、16.9m2 丸窓)で、全部で296室。(何れも早期申込み割引料金)我々の申込んだクラスは、16.9m2、角窓で140室あり、全客室数の47%で標準客室といえるでしょう。船賃には、運賃、いわゆるホテルの部屋代に、飲食のすべて(vol.5で内容詳述)が含まれています。(アルコール類は別)
オプショナルツアー代金はかなり割高感がありますが、我々は、寄港地の殆どで参加しました。中には、一切参加しない人や、各寄港地で、船側で用意する、町の中心部までの無料シャトルバスのみを利用する人、言葉に自信のある人は、タクシーでの単独行動で安上がりにする人もいました。我々のオプショナルツアーの中で最長、最高額は、6泊7日の「ガラパゴス・キト・イースター島の旅」で料金562,000円でした。
結果として、我々としては、一世一代の出費でしたが、悔いは無く、二度と出来ない体験の積み重ねの収穫は満足に思っています。
おわり
「飛鳥」プロフィール
造船所 / 三菱重工株式会社長崎造船所
船籍 / 日本
総トン数 / 28,856G/T
全長 / 192.8m 全幅 / 24.7m
喫水 / 6.7m
航海速力 / 最高21ノット
主機関 / ディーゼル17,300馬力×2基
横揺れ防止装置 / フィン・スタビライザー
乗組員数 / 約270名
客室数 / 296室
乗客定員 / 592名
竣工 / 1991年10月28日