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おさんぽ通信

    第1回 新百合ヶ丘駅~古沢を歩こう!

    2005/01/01

    1.    小田急線新百合ヶ丘駅北口
    2.    遊歩道
    3.    山口富士見歩道橋
    4.    桜並木
    5.    体験農業
    6.    コスモス畑

    7.    蜂蜜
    8.    九朗明神社
    9.    子育て地蔵
    10.  畑
    11.  湧水
    12.  地神塔・平和の碑

    おさんぽ記

    小田急線新百合ヶ丘駅北口(1)を背に、麻生区役所の前を通り、消防署の角を右折。少し行くと、ヤマザクラが両側に並ぶ気持ちがいい遊歩道(2)がありました。駅のすぐそばに、こんなお花見スポットがあったとは、びっくりです。

    小田急線の線路を跨ぐ山口富士見歩道橋(3)は、その名前から、富士山が見える……? さっそく通りがかりのおばあちゃんに聞いてみたら、「以前は晴れた 日によく見えたけど、今は高い建物が多くなったからどうかしらねえ?」。うん、今度、天気がいい日に確認してみましょう。

    マンション群の谷を下っていくと、麻生川沿いの桜並木(4)。新百合ヶ丘駅から柿生駅までの約1 kmの両岸に200本以上。開花に合わせて催される「桜まつり」は模擬店などが出て、とてもにぎやかです。ふだんも散歩やジョギングをする人々が行き交い、憩いの場となっています。

    世田谷通りを横断した先に、田んぼを発見。新百合ヶ丘駅から、寄り道をせずに歩いてくれば約15分の距離です。このあたりは丘陵地に挟まれた “谷戸”で、里山の原風景が残されているところ。田んぼには何やら“かかし”が、ずらりと並んでいました。「ここで1年を通して麻生区の体験農業(5)を 行っているんです。区内にはもうほとんど田んぼは残ってないんですよ」と、偶然作業をしていた区役所の人。田んぼに立つかかしたちのユニークな表情が、里山をますますほのぼのとした風景にしています。

    休耕田を利用したコスモス畑(6)は、セレサ川崎農業協同組合が地域の人々に楽しんでもらおうと、約3万本のコスモスを植えたもの。毎年行われる「コスモス景観会」は、コスモスを好きなだけ摘んで持ち帰ることができるので、大評判。満開になる前から、「コスモスが大好きなの」とカメラをもった女性が何人も訪れていました。

    小田急多摩線五月台駅の近くには、高層マンションがそびえ立ちます。その坂道をのぼっていくおじさんの耕運機。なんともアンバランスな光景に、再びほのぼの気分。そして、ある一軒のお宅には、「はちみつこちら」の看板。庭でミツバチを飼う井上孝男さんは趣味が高じて、自家製の蜂蜜(7)を販売しています。 麻生川の桜の蜜を集めた「さくら蜂蜜」は人気で、季節には予約が殺到するそうです。

    竹林に覆われた九朗明神社(8)は、鎮守の神さまの風格。長いあいだ、この里山を見守ってきたのでしょう。近くの柿の木の傍らには赤いお堂。農作業のあいまに立ち話をしていたおかあさんたちが、「どうぞ、中に入ってお参りしていってください」と、お堂の引き戸を開けてくれました。子育て地蔵(9)が祀られ てあり、「七五三の季節にはお参りに来る人がいますよ」とのこと。金色のお地蔵さまは、やさしく微笑んでいるように見えます。

    丘の上へ向かう道をよいしょ、よいしょと落ち葉を踏みしめながら上ります。雑木のトンネルがいつまでも続き、気持ちは少しずつ不安に。と、急に、視界が広 がりました。見わたす限り畑(10)が連なっています。「ここは土がよくて、日当たりも最高だから、スーパーで買う野菜とは味がぜんぜん違うんだよ」。畑を借りて、自分たちが食べる分だけの野菜を作っていると、陽に焼けた笑顔のおじさんが話してくれます。「丘の上に、こんな開けた土地があるなんて知らなかったでしょ」。さらに驚いたことに、畑を挟んですぐあちらの斜面には、稲城市の平尾団地がびっしりと連なっているのでした。

    再び里山にもどり、古沢の各所に見られる湧水(11)をごくり。心の底からほっとします。道路脇に、農業の神さまである地神塔(12)、その隣に平和の碑が並んでいました。昭和19年(1944)、米軍の爆撃機を照らし出すための探照灯(サーチライト)の基地が、この古沢の台地につくられたといいます。平成2年(1990)、古沢の人たちは平和への願いを込めてこの碑をたてました。

    どこかでたき火をしている匂いが漂ってきます。遠くに見える世田谷通りには、家路へ急ぐ車のバックライトの列ができはじめました。夕闇がせまる古沢の里山 風景。いつまでも眺めていたいなぁとぼんやり見ていたら、頭上をカラスが「カァー」と鳴いて、山の向こうへと飛んでいきました。

     おさんぽクローズアップ!!

    「麻生区体験農業 〜親子で米作り〜(平成16年度 第9回)」

    麻生区では、区内に残された貴重な田んぼを利用し、小中学生とその親子向けの体験農業(麻生区魅力ある区づくり事業)を開催。4月の苗床づくりにはじまり、6月は田植え、夏休みは草取りとかかし作り、10月は稲刈りなどと、さまざまな作業に挑戦できます。何といってもお楽しみは、11月末の収穫祭。自分たちが1年かけてつくった餅米を使って、餅つきをします。問い合わせ等は下記の事務局まで。

    ■044-965-5113(麻生区役所地域振興課内 体験農業実行委員会事務局)
    http://www.city.kawasaki.jp/asao/index.htm
    (麻生区ホームページ 区の事業の紹介)

    「井上孝男さんの蜂蜜」

    九朗明神社入口を入って、左側の一軒家。「はちみつこちら」「みつばちちゅうい」の文字と、庭に重ねられている養蜂箱が目印。瓶詰めのレンゲ蜂蜜、アカシヤ蜂蜜、クローバー蜂蜜、百花蜂蜜、くり蜂蜜などを販売しており、香りと味にそれぞれの強い個性が感じられます。どれも濃厚な味わいで、一度食べたら忘れられません。疲労回復や高血圧などに効くスズメ蜂の地獄漬け、熊蜂入り強精剤はちみつ、スズメ蜂の焼酎地獄漬けなどもキョーレツ!郵送可。

    ■044-966-1486
    ■川崎市麻生区古沢499-2
    レンゲ蜂蜜、アカシヤ蜂蜜、クローバー蜂蜜、くり蜂蜜、さくら蜂蜜ともに300グラム1300円、600グラム2000円、1200グラム3500円。
    スズメ蜂の地獄漬けは1200グラム8000円

    ※ 平成16年(2004)10月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。