第44回 王禅寺ふるさと公園とその周辺を歩こう!
2008/07/011. 王禅寺ふるさと公園
2. 展望台
3. 野菜生産者直売所
4. 遠見の広場
5. 橋
6. 比川社
7. 化粧面谷公園
8. 籠口ノ池公園
9. 王禅寺般若面調整池
おさんぽ記
夏、太陽がまぶしく照りつける日におさんぽするのは二の足を踏んでしまいます。エアコンが効いたさんぽ道はないかなあ?? なんて考えて、そうだ、天然のクーラーが効いている森や雑木林で森林浴をしよう! と向かったのが、王禅寺ふるさと公園(1)です。
入口から駐車場の方へ歩き、散策園路の階段を上っていきます。とたんに頭上は木々の緑に覆われ、一気にひ~んやり。少し湿った木道を行くと、草や葉のしっとりとした呼吸が肌に感じられるようです。途中のベンチで、はあ~っとひと息。木道の手すりと柱に鳥や虫のオブジェが隠されているのを見つけます。
高台の展望台(2)にベンチとテーブル。「麻生ビューポイント」と書かれた標柱が立てられています。しかし、この季節、木々の枝が勢いよく広がっているため、何も展望することができません。きっと、晩秋から冬にかけては美しい眺望を楽しめるのでしょう。
多目的広場には暑さのせいか、だれもいません。暑い暑いと歩いていると、子どもたちが走ってきて遊具で遊び始めます。子どもは元気だなあと横目に見つつ、公園のフェンスの外に青い幟「JAセレサ川崎 野菜生産者直売所(3)」を見つけて、ダッシュ! なすときゅうりを手にとって、代金は合計200円。安~い!
涼しさが身に染みるトンネルをくぐった先は、風景がぐっとワイルドになります。右側に竹林、正面に鬱蒼とした森、道ばたに「危険 マムシ出現中! 十分ご注意ください」の看板。舗装されていない地面に目を移すと、アリたちが自分より大きな緑の虫をえっさほいさと運んでいます。
散策園路の行き止まりにはヤマザクラ。すっくと1本だけそびえ立つ姿は神々しいばかりです。引き返して別の園路を行き、遠見の広場(4)へ。「おさんぽ通信 第27回琴平神社~虹が丘団地を歩こう!」で訪れたときは春先で、今回は夏真っ盛り。目に映る風景の色がまったくちがいます。
再び散策園路へ戻り、先ほどとはまた別のルートへ。イロハモミジ、コナラ、シラカシ、ハリギリ、アラカシ、ヒサカキといった樹木を眺めながら、緑の空気を胸いっぱいに吸い込みます。おっ!? と、びっくりしたのは、突然現れた橋(5)。この公園に橋があるとは知らなかったなぁと渡り、長い階段を下ると、芝生広場。水がきらきらと流れるせせらぎで親子連れが水遊びをしています。
う~ん、森林浴、もっとしたいねぇ! と調子にのり、ほかに森や雑木林はないかと地図を見ると、すぐ近くに広い公園。さっそく琴平神社の方へ進んで、通りを横断。道路の奥に比川社(6)の鳥居を見つけ、ちょいと寄り道をします。
そして、住宅街の中に現れた化粧面谷(けしょうめんやと)公園(7)。江戸時代、このあたりは徳川二代将軍秀忠公の夫人、お江与の方の化粧料を賄っていた領地だったと伝えられています。化粧料とは嫁入りの際の持参金のようなもので、ここで得られた年貢はお江与の方の衣服代やその他の費用になったとのこと。化粧領時代の名残の字名「化粧面」が、いまも公園の名前につけられているというわけです。
籠口ノ池公園(8)の前を通過し、その先の通り沿いで「住居表示街区案内図」を発見。昔の字名が書かれているのを見てみると、「字化粧面谷」の北に「字般若面」の表示。般若面!? と王禅寺般若面調整池(9)へ足を向けます。後日、『川崎地名辞典』で調べると、「般若」とは仏教や寺院を指す語、「面」とは「免」を意味する語で、この地は王禅寺の免田だったのではないかと推測されているようです。
秀忠とお江与の方が亡くなった後、王禅寺村は徳川家の菩提寺である芝・増上寺の寺領になるなど、徳川家とのつながりは深いものでした。あ、そうか、「化粧面」の「面」も同じように「免」を意味していたのか……。森林浴がいつのまにか脱線して、ざくざく歩き、たっぷり汗をかいてしまいました。
おさんぽクローズアップ!!
「王禅寺ふるさと公園」
川崎市制60周年を記念して造られた公園。
多摩丘陵の自然が残され、その中を散策園路が伸びています。展望のよいポイントがいくつかあり、ベンチやあずまやでゆっくりしたいところです。
多目的広場には上ったりぶら下がったりできる遊具、芝生広場には清涼感たっぷりのせせらぎが整備され、大人も子どもも1日じっくりと遊べます。
入口近くから伸びている「裏門坂」は、王禅寺の表門に対して裏門にあたるところに位置する坂。かつては急坂で赤土だったため、雨天時はぬかるんで通行が困難だったそうです。
■ 川崎市麻生区王禅寺528-1
※ 平成20年(2008)7月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
取材・文/森田奈央
森田奈央
日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。