第28回 栗平駅~黒川駅を歩こう!
2007/03/011. 栗平駅
2. 矢印付き階段
3. 常念寺
4. 栗木御嶽神社
5. コブシ並木
6. 栗木緑地
7. 真光寺緑地
8. 展望広場
9. 黒川農産物直売所
10. 黒川駅
おさんぽ記
栗平駅(1)を出ると、ほのかな花の甘い香り。あ、これはジンチョウゲ、お、これは菜の花と、鼻をくんくんさせながら出発します。日なたはもう背中が汗ばみそうなほどの暖かさ。走る電車の音もカタンコトンと軽快です。
目の前が広がって、新緑が芽生え始めた丘、菜の花が鮮やかに咲く畑を一望。気持ちいい〜! と伸びをした足下には、矢印付きの階段(2)。この先に「桐光学園」があるので、通学時の交通整理のために書かれた矢印かな?と考えます。
畑や庭にタンポポ、ネモフィラ、シバザクラ……。春の草花を目にすると、どうしてこんなにも嬉しさがこみ上げてくるのでしょう。「ヤマボウシ ミズキ科」 とプレートをつけた木にも小さいつぼみがたくさん。茅葺き屋根の蔵が建つお宅の手前を左へ曲がれば、稲荷山常念寺(3)がありました。
常念寺の境内には宗祖である親鸞聖人の立像。本堂の中をのぞいてみると、襖にクジャクの絵が描かれ、柱や欄間に美しい装飾が施されています。「本 堂の右手に並んでいるお地蔵さまは『いぼとり地蔵』と呼ばれているんですよ」と、お掃除をしていた女性。赤い前掛けをつけた6体のお地蔵さまの頭上ではハナモモが満開です。
ボールを打つ音がさわやかなテニスコートの前を通り、斜面一面に紫色の花が咲いているのを眺めます(ハナダイコンの花?)。桐光学園の校舎に何 本も下がっている垂れ幕の「祝」の赤い文字を見ながら歩くと、白い花をたくさんつけた並木道。通りを渡ったら、栗木御嶽神社(4)の大きな鳥居が迎えてくれました。
栗木御嶽神社の主祭神は日本武尊。大晦日の夜には御神酒や甘酒がふるまわれたり、成人の日前後の日曜にはどんど焼きが行われたり、地域の人々に鎮守として 親しまれている神さまです。社務所には交通安全、学業、安産、縁結び、長寿のお守り。境内に並んだアジサイには新芽がふき出ていました。
裏参道の鳥居をくぐって出た住宅街には、先ほどの白い花の並木。これはコブシ並木(5)でしょう。工事中の大きな建物を横目に進むと畑が広がり、等間隔に並ぶ木々。今度はなんの木かな? と見つけたのは、枝の先に残されていたイガイガ。あ、クリの木だ。
南側に立つクリの木にも新芽。春だなぁとここでも実感します。そして、栗木緑地(6)への看板と階段。はりきって駆け上がり、木立のトンネルが伸びる尾根 道を行きます。木と木の向こうには町田市の住宅街の屋根。犬が吠える声やバイクが走って行く音が聞こえてきます。時折、さんぽの人、ランニングの人とすれ ちがいますが、ふとふり返ったときにはすでに見えなくなっているのでした。
尾根道から川崎市側、町田市側それぞれに階段が伸びています。なるほど、ここで行き来できるのかと見ていて、思ったこと。川崎市側には「栗木緑地」の看板 が立てられていたけど、はたして町田市側には? そこで、長い階段をとことこ下りて見に行くと……、看板には「真光寺緑地(7)」。やっぱり! 呼び名が ちがっていました。
漂ってくる花の香りや耳元をくすぐる虫の羽音を楽しんでいるうち、あずまやがある展望広場(8)へ。眼下には菜の花がきれいな畑と一戸建ての家、左手遠く にはマンション群が見渡せます。階段を下りると、先端技術産業の研究開発を行っている「マイコンシティ」の施設。白い建物と建物のあいだから、再び先ほど のコブシ並木が眺められ、あぁ、あのときの! と、懐かしい友人に会ったような気分になります。
黒川青少年野外活動センター」を見下ろしつつ「散策路」と書かれた小道を歩き、広い通りに。坂道を下って行ったら、黒川農産物直売所(9)が待っていてくれました。「第4回 黒川駅〜はるひ野駅を歩こう!」で訪れたときは、あいにくの休業日。でも、今回は営業中です。
「これからの季節だと、タケノコが並ぶよ。生で食べてもおいしいタマネギやキャベツ、トマト、サヤエンドウ、スナックエンドウ、セリ、マダケ、ハ チク……」とお店の人。たくさんの野菜に囲まれて、どれをおみやげにしよう? と迷いに迷った後、ちょうど旬だとおすすめしてくれた多摩区特産の「のらぼう菜」を手にして大満足。黒川駅(10)へと向かいます。
信号待ちをしているとき、なにげなくふり返って見た直売所の看板。以前は「九時三〇分頃開店」と書かれていたのが、「頃」の上に「より」の紙が貼られて「九時三〇分より開店」になっています。時間に厳しくなったんだ……と、おもわず頬がゆるみました。
おさんぽクローズアップ!!
「稲荷山常念寺」
戦国時代の永禄元年、現在地に創建。浄土真宗本願寺派。ご本尊は江戸時代中期作の木造阿弥陀如来立像。
明和年間に再建された後に作られた蝋燭立や香爐など、江戸時代の仏具が多く残されており、本堂と同じく貴重とされています。
「いぼとり地蔵」も元禄10年(1697)のものを最古に、6体のうちの3体が1700年代前半のもの(ほかの2体は不明)。
古くより信仰され続け、今でもお参りに訪れる人は後を絶たないそうです。
■ 044-988-0205
■ 川崎市麻生区栗木203
「黒川農産物直売所」
地元で朝、収穫されたばかりの新鮮な野菜が並びます。
訪れたときに並んでいたのはダイコン、ネギ、トマト、菜花、小松菜の花、白菜の花、のらぼう菜、たまご、切り花、苗花などなど。
「のらぼう菜はクセがないの。おひたしやごまあえ、炒めても、スパゲティーなどに入れてもおいしいわよ」などと、おいしく食べる方法も親切に教えてくれます。
写真は、のらぼう菜。
■ 水曜・土曜・日曜・祝日のみ営業
■ 9:30〜16:30
※ 平成19年(2007)3月末にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
取材・文/森田奈央
森田奈央
日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。