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おさんぽ通信

    第18回 柿生駅~三輪町を歩こう!

    2006/05/01
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    1. 柿生駅
    2. 浄慶寺
    3. たまごの自動販売機
    4. ログハウス(英屋)
    5. 廣慶寺

    6. 西谷戸横穴墓群
    7. 沢谷戸自然公園
    8. 熊野神社
    9. 高蔵寺

    おさんぽ記

    小田急線柿生駅(1)の南口に降りて、ぷ〜んと漂ってきたのはイチゴの甘酸っぱい香り。「今日入ったばかり。ほら、きれいな色だよね。もうイチゴの季節も終わりだよー」。青果店から元気な売り声が聞こえてきます。以前、柿生駅に下車したのは麻生不動院へおさんぽした冬のこと(おさんぽ通信第13回)。あのとき、駅前では柿の色であるオレンジ色がやけに目についたけれど、もうすぐ初夏となる今回は、イチゴの輝くような真紅色が出迎えてくれました。

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    ロータリーにはバスを待つ人々の列。ここからは溝の口駅やたまプラーザ駅、こどもの国行きなどが出ていて、周辺の道路へバスを誘導する笛の音がピピッピピーッと定期的に鳴り響きます。ふと、ロータリー脇にある誘導員さん専用のバス時刻表の上に、時計がビニールテープで貼り付けられているのに気づきました。「やっぱり時間は正確にしたいですからね。自分たちで100円ショップで買ってきたんですよ」。誘導員さんの頼もしい言葉に、屋外に掛けられた時計はチクタクと動き続けるのでした。

    さて、商店街を歩いて印象的だったのは、靴店の「○○中学校 上ばきシューズ」、玩具店の「指定体育着、通学カバン販売してます」という貼り紙。“地元の商店街”といった雰囲気がじわりと伝わってきます。ショーウインドウに涼しげな夏物衣料やカゴのバッグ、サンダルが並んだブティックには「SUMMER」と書かれた幟が立てられ、季節の移ろいも感じさせてくれます。

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    道なりに進んだ左側に、浄慶寺(2)の入口が見えてきました。ここは「柿生のあじさい寺」と知られ、6月中旬から下旬にかけて、あじさいの花を観賞する人々でにぎわうお寺。「ここのあじさいは多くが木陰にあるので、咲くのが少し遅いんですよ」と、お寺の人が教えてくれました。境内には少しずつ花をつけ始めたあじさいがいくえにも連なり、これからがとても楽しみな風景です。

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    横浜上麻生道路を横切り、麻生川沿いへ。ポプラの葉がさわさわと音をたて、さわやかな風が吹き抜けていきます。新三輪橋を渡ってそのまま直進すると、今度は鶴見川の流れ。四ツ木橋の上から川をのぞき込んだら、コイがゆったりと泳いでいるのが見えました。住所が町田市になっているのにやっと気づいた頃、たまごの自動販売機(3)を発見! さらに、突如現れた大きなログハウス(4)に、おぉ〜!と、しばし足が止まります。

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    まだ水入れされていない田んぼのなかからカエルの鳴き声が聞こえてきました。廣慶寺(5)のご住職が「もっともっと鳴くよ。夏には鳴きどおしなんだ」と笑います。参道には、「みのるほど頭のさがる稲穂かな」「その人を知らざれば則ち友を視よ」「叱られた恩は忘れず墓参り」などの言葉があちこちに。「みんなのためになる言葉を並べているんだよ」。1つ1つ読んでいくと、なるほど〜と、おもわず日ごろの自分を振り返るのでした。

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    これはまたなんだ?と、再び足を止めたのは、西谷戸横穴墓群(6)。崖の斜面の草むらのなかに直径1メートルほどの穴が3つ開いているのが見えます。案内板によると、6〜7世紀に作られた古墳の一種で、地域の有力者一族の墓と考えられているとのこと。横穴墓からは人骨や直刀、ガラス玉などが出土したそうです。

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    ずいぶん古いものが残されているんだなぁと歩いていたら、突然、整然とした新興住宅地が目の前に。あまりの風景の変わりように狐につままれたみたいです。通りのつきあたりに広がっていた沢谷戸自然公園(7)には、「風のとおり道」「風の舞台」と題されたモニュメントが配され、「チビッコ広場」「芝生広場」の迷路やすべり台などの大型遊具では子どもたちが楽しそうに遊んでいました。

    ホワイトボードに「大根100〜130、カブ130、スナックエンド150、フキ100、イチゴS200、漬物150」などと書かれていたのは、上三輪農産物即売所。営業は毎週火曜と金曜の午後2時から6時までで、通りがかったときはだれもいない、何もない状態でした。そして、熊野神社(8)の境内もひっそり。樹齢300余年の神木アカガシが大きく枝葉を広げ、そのすきまから西日がきらきらと差し込んでいます。

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    路地を入ったところにあった金蔵寺(9)は、「七福神としゃくなげの寺」。「3月下旬から5月上旬、種類によっては5月下旬くらいまでがしゃくなげの見頃です」と、境内で会った若い住職さん。「春先にはハッカクレン、エビネ、ムサシアブミなどの山野草も咲きますよ。それから、この寺にはすべての七福神が祀られています。どうぞゆっくりしていってください」。

    夕方になって吹き始めた風がぱたぱたと七福神の赤い幟をはためかせています。そういえば、明日の天気予報は雨。緑豊かな境内はしっとりと、ますます鮮やかな色に染まることでしょう。今度はそんな風景を眺めに訪れたいなぁ。じっくりと足を止めて、日ごろの自分を振り返り、清らかな緑に心洗われたい……。そのためには、おさんぽスタート午後2時10分は遅いっ!

    おさんぽクローズアップ!!

    「麻生山 浄慶寺」

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    元和7年(1621)創建。参道や本堂横に広がる山林の細道に3000株以上のあじさいが一斉に花開き、見事な景観が作られます。また、春は山桜、水仙、秋は紅葉、彼岸花、冬は梅、椿などと、季節ごとの花も見逃せません。
    山門を入ったすぐのところに賑やかに並ぶ羅漢さまの石像や、草花の足下にそっとたたずむ石仏もそれぞれ趣たっぷりで、見るものの心を穏やかにしてくれます。 火伏せの神さまである秋葉大権現を祀る秋葉神社もあります。
    ■ 川崎市麻生区上麻生386

    「見星山 三輪院高蔵寺」

    正平17年/康安2年(1362)、足利将軍家代々の祈願寺として創建。晩年の北原白秋がよく訪れ、歌を詠んだと言われる寺としても知られます。
    境内のしゃくなげは約30種1200株。赤、白、ピンクなどの花が次々と咲き誇り、東国花の寺百ヶ寺6番札所とされています。
    町田高蔵寺七福神のほかにも、風神、雷神、金剛力士像などの迫力満点の姿も拝観できます。
    多摩八十八カ所霊場10番札所として、お遍路さんで賑わう季節もあります。


    ■ 町田市三輪町1739

    ※ 平成18年(2006)5月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。