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おさんぽ通信

    第16回 栗平駅~平尾~坂浜を歩こう!

    2006/03/30
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    1. 栗平駅
    2. 御座松塚
    3. 杉山神社
    4. 梨園

    5. 坂浜からの風景
    6. 大塚牧場
    7. 光仙婆さん祠
    8. 平尾団地

    おさんぽ記

    今回、おさんぽする平尾〜坂浜地区は東京都稲城市。川崎市麻生区の小田急多摩線栗平駅(1)から程近いことを地図で確認し、さっそく駅北口から出発。駅前スーパーに隣接するベーカリーショップのオープンカフェスペースには飲みものをのんびりと楽しむ人々がいて、 “郊外の優雅な昼下がり”といった雰囲気です。

    まず、以前からその評判を聞いていたスパゲティ専門店「栗の木」へ向かいます。が、お店の前まで行くと、なんと定休日。新興住宅地の通りに引越のトラックが止まっているのを横目に見て、「ワタシも引っ越して来たいなぁ。そしたらいつでも食べられるのに」。次の機会までおあずけになってしまったスパゲティに、オモイを強く募らせます。

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    交差点の角に手書きの案内看板。「御座松塚(2)。約700年前、武蔵分倍河原で新田義貞は鎌倉幕府の北条泰家と戦い、さらに鎌倉へ進軍する途中、死んだ将兵を平尾あたりで塚に葬り、松を植えた」とありました。看板のあちらに大きな松が1本立っていますが、「塚の場所は明確ではない」とのこと。この松はいつからこの地を見つめてきたのだろうと、そばにあった階段を上って、まわりの景色を眺めます。

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    新興住宅地を抜けた先は雑木林と畑。右手へ道なりに進みます。途中の民家の門前には「いなぎ 土のかほり 新鮮野菜」と書かれたのぼりが立てられ、キャベツ、春菊、ブロッコリー、タマネギなどに50〜100円の値札がついています。白い発砲スチロールの箱には「粕漬け250円」とあり、粕の香りがほのかに漂っていました。

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    鮮やかな濃紺ののぼりが階段上まで続いているのは杉山神社(3)。鶴見川流域に72社ある杉山神社のうち最も上流に位置する1社で、日本武尊と弟橘姫の木像が安置されているそうです。「勝利・縁結びの守護神」とあり、境内にあるおみくじ結び所はまるで白い花が咲いたよう。少し傾きぎみの石灯籠に刻まれた「武蔵多摩郡府中領平尾村」という字を見て、人々の信仰心の深さを感じます。

    「三毛猫みたいに咲くんだ」。梨園(4)のそばで作業中のおとうさんに、梨の花はいつ咲くのか聞いたら、返ってきた答えがこれ。み、三毛猫って……? 「三毛猫の毛は茶、白、黒と3色あるだろ。ここらへんの梨もいろんな種類があって、花があっちこっちで色づくのがバラバラなんだ。まぁ、お釈迦さまの花まつりが終わったころから、だいたい咲き始めるな」。ふむむむ、なるほど。

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    梨園の向こうの丘の上に3重に連なった赤い鳥居、その奥に枝を大きく広げた木が見えてきました。路肩には黄色や青の小さな野花、木立には鳥たちのさえずり。絵に描いたような田園風景を眺めながら、上り坂をぐんぐん歩いて行きます。「東京よみうりカントリークラブ」の交差点を左折し、坂浜地区の小田良通りへ。スイセン、ジンチョウゲ、モクレンなどの花々が迎えてくれ、春がめぐってきたことを知らせてくれます。

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    と、そこで目に飛び込んできた坂浜からの風景(5)。自分を囲む自然と、対面の丘に並ぶ高層マンション群。視覚のなかで繰り広げられる、そのギャップの融合におもわず息をのみ、立ちつくしてしまいます。そして、聞こえてきたニワトリの鳴き声。お? とのぞいてみると、放し飼いされたニワトリが数羽、牛舎の前を歩いていました。ここは大塚牧場(6)。稲城市で今でも唯一、営まれ続けている牧場です。

    「40年くらい前まで、ウシやニワトリを飼っている牧場がこのあたりには何軒かあったんですけどね」と話すのは大塚牧場の奥さん。「ここは谷戸で、小田良通りの両脇には田んぼが広がっていました。今も残っていることは残っていますが、畑になっているところも多いです。以前は湧水にホタルが飛んでいましたよ」。

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    小田良通りを引き返すと、行きには気づかなかった光仙婆さん祠(7)。かたわらの案内看板で、「約300年前、全国修行の尼僧がここでたちの悪い風邪に倒れ、村人たちによって丁寧に葬られた。その後、百日咳にかかった際、この祠にお茶をあげ、そのお茶を飲むと治ると言われた。そこでお礼に茶わんを供える風習が広まった」と読み、どこにでもいろいろな話が残されているものだなぁと感心します。

    特別養護老人ホーム「正吉苑」を過ぎ、右へ下って行く細い道へ。今度、目の前に現れたのは、昭和40年代に開発された平尾団地(8)の風景。道沿いの梅林にはウグイスの姿があり、枝から枝へ飛びまわるたび、花びらがはらはらと落ちてきます。春の訪れを満喫した今日のおさんぽ。こうして満喫させてくれる自然に心から感謝し、帰途につくことにしました。

    おさんぽクローズアップ!!

    「大塚牧場」

    乳牛と肉牛を飼育。ニワトリ、ヤギ、ウサギ、アライグマ、クジャクなどもいて、ちょっとしたミニ動物園。ウシたちのまわりをニワトリがコッコッコッコッと歩いていく光景が微笑ましく、観光牧場ではないよさがたっぷりです。
    7月中旬〜8月中旬、近くの農園ではブルーベリー摘みが楽しめます。いくつかの品種を味見しながら、気に入ったものを好きなだけ摘んで100グラム150円!
    小田良通りに立つのぼりが開園の目印。


    ■ 稲城市坂浜1194

     ※ 平成18年(2006)3月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央 

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。