第15回 新百合ヶ丘駅~新ゆりグリーンタウンを歩こう!
2006/01/171. 新百合ヶ丘駅
2. 陸橋
3. 山口台歩行者専用道
4. 陸橋
5. むじなが池公園
6. むじなが池
7. 桜並木
8. 白山神社
9. 新ゆりグリーンプラザ
おさんぽ記
新百合ヶ丘駅南口(1)を出てデッキの上を進むと、大輪のヤマユリを高く捧げ持った彫刻「ふるさとの詩」があります。サティ・ビブレ横の階段を下りて行ったところには、巨大な目がじっとこちらを見つめるオブジェ「EYEBALL」。どちらも存在感があり、日常のなかに“ふとした瞬間”をあたえてくれます。
「EYEBALL」から伸びる歩道はそのまま陸橋(2)となり、その上から左右に眺められたのは新しいマンション群の建築現場。ダダダダダッダダダダダッと工事の連続音が響きわたっています。マンション敷地内の前庭では草木の植え込み作業をしているところで、コンクリートの建物が緑に彩られていく様に、「わぁ、きれいな庭になりそうだね〜」と道行く人の声が聞こえてきました。
並木に沿った煉瓦敷きの歩道を行き、瀟洒な住宅街を歩きます。交差点の角で目にとまったのは、「ふるさとの創造」と刻まれた碑。この地域の区画整理事業を記念したもので、碑の裏には「工事施工前の土地利用状況は若干の農地のほか、大部分は薪炭林や備蓄林としてのクヌギ、コナラ、スギ、ヒノキ林だった」とありました。
横道に入り、麻生中学校の校庭の横を走る山口台歩行者専用道(3)へ。コブシ、シラカシ、ヤマボウシ、ナツツバキほか、さまざまな樹木が並び、季節ごとの散策が楽しい遊歩道。先ほどの碑には、「孫子の代まで誇りをもてる街づくりを理念とする」とも書いてありました。その心は、緑豊かな美しい街並みにとてもよく表れているようです。
尻手黒川道路の広い通りに出ます。地図を見ると、少し行った先にまた陸橋(4)。今度はどんな眺めだろうと足をとめました。テニスコートの向こう、森に囲まれて建つ団地が見えます。緑と共存する街並みがあの場所にもありそうです。さっそく行ってみましょう。
交差点を右に曲がって坂を上った右手に、陸橋から眺めた団地「新ゆりグリーンタウン」が見えてきました。新ゆりグリーンプラザの商店街を抜けて行くと、そこはすっかり森の中。団地に住んでいるというおじいちゃんが、「ここはむじなが池公園(5)だよ」と教えてくれます。「ちょっとおいで。ほらこれ、多摩の寒葵(タマノカンアオイ)。これは春蘭(シュンラン)ね。以前、こういった山には山野草がたくさん生えていたんだ。これからの季節は金蘭(キンラン)や銀蘭(ギンラン)が咲くよ」。
木々の中へカメラを向けているのは、趣味で鳥や花を撮影しているという男性。「メジロやヒヨドリのほか、アオジ、ルリビタキ、ガビチョウ、コジュウケイもここにはいる。むじなが池にはカワセミがやってくることもあるよ」。こんなに身近で、これほどの山野草や野鳥などの自然を見られるとは、知らないということは、なんて損なことでしょう。
昔、池の周辺にむじな(アナグマの別称)が棲んでいたので、こう呼ばれるようになったというむじなが池(6)。池のまわりをよく散歩しているという女性と少し立ち話。「ここでは土を踏めるでしょ。だから気に入っているの。それから、夜が明ける前に来てね、朝日がぱーっと差し込んで、この森と池の風景が刻々と変わっていくのを見るのが好き。新百合ヶ丘駅の方から散歩をしに来る人もいるわよ」。
滝までのんびり行って帰ってくると、さっきのおじいちゃんに再会。「白山神社へ行く道は桜がすごいよ」。言われたとおりに調整池沿いを歩いて行くと、今度は池で会った女性にばったり。「あら! さっき教えればよかったと思っていたところだったの。この先の桜並木(7)ね、春はとってもきれいなのよ」。等間隔に並んだ桜の木の枝を見上げ、無数のつぼみが出番はまだかと待っているのを確認して、うきうきします。
宝永3年(1706)の「王禅寺村絵図」のなかに、すでにその名が見られる白山神社(8)。拝殿に納められている総ケヤキ造りの本殿はいくつもの龍や獅子の彫刻が施され、市の重要歴史記念物に指定されているもの。ふだんはその姿を見ることはできませんが、急階段の両脇に直立する2本の大木を眺めるだけでも、神社の歴史を感じられます。
再び、桜並木を戻り、暮れゆくむじなが池を眺めます。池を背にして階段を上ったところは新ゆりグリーンタウンの商店街、新ゆりグリーンプラザ(9)。精肉店でコロッケとメンチカツを揚げてもらい、豆腐店で豆腐と大豆とがんもを買います。「その大豆は15分くらい煮てね。味つけしなくても甘みがあっておいしいわよ」。おさんぽをした日は、その日の晩ごはんも“お楽しみ”でいっぱいなのです。
※ 平成18年(2006)1月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
取材・文/森田奈央
森田奈央
日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。