第9回 読売ランド前駅~穴澤天神社を歩こう!
2005/09/151. 読売ランド前駅
2. 多摩自然遊歩道
3. 多摩美ふれあいの森
4. 新宿高層ビル群の眺望
5. 川崎市フルーツパークのナシ即売ト
7. 寿福寺
8. ナシ園の向こうにジェットコースター
9. 小沢城址
10. 穴澤天神社
おさんぽ記
読売ランド前駅(1)の北口を出発! 駅前から要所要所に立てられた「多摩自然遊歩道」の案内地図に沿って歩を進めます。住宅街の道が上り坂になってきたなぁと思っていたら、あっという間に深い緑の中へ吸い込まれました。
さっきまで駅前にいたとはとても思えない、多摩自然遊歩道(2)の風景。どこかの山奥に迷い込んだようです。しかし、「読売ランド前駅500m→」という表示を見つけ、一瞬にして現実に引き戻されます。
場所によって左のほうにちらちらと見え隠れしているのは、多摩美1〜2丁目の住宅街。寄り道をした多摩美ふれあいの森(3)の木のトンネルのすぐ先には家々が連なっています。住空間のとなりにこれだけの自然があるとは、なんとぜいたくなんでしょう。
階段を上り、遊歩道がアスファルトに変わった右手には、読売ジャイアンツ寮と日本テレビ生田スタジオの建物。少し行くと、新宿高層ビル群の眺望(4)が遠くに広がります。Jリーグの「東京ヴェルディ1969」のグラウンド(今回は応援しないよ)があるのを横目に坂を下り、桜の並木道を今度はずんずん上っていくと、大きな温室が2つ見えてきました。
川崎市フルーツパークのナシ即売(5)には、近所の人などが次々と訪れます。案内所のホワイトボードには「本日の販売品 幸水28袋 多摩4袋 長十郎4袋 小玉2袋」などと書かれ、窓口をのぞき込むと、たくさんのナシが袋詰めされていました。「ここは試験場だから、一般には売られてない品種のナシもあるよ。シーズンになると、収穫したブドウ、クリ、カキ、キウイなども即売します」と、フルーツパークの人。「とっても甘いよ」と教えてもらった「多摩」6個入りを購入。どんなお味なのか、楽しみです。
パーク内では果樹園や温室を自由に見ることができる(一部を除く)ほか、高台には展望室(6)もあります。ここのベンチに座って、おとなりの「よみうりランド」の乗りものに乗ってはしゃぐ人々の様子をにやにやと眺めていたら、つい長居。さぁ、そろそろ重い腰をあげましょう。
推古天皇の頃(598年)に開基されたという寿福寺(7)は、市の重要歴史記念物に指定されている木造国一禅師坐像(室町時代後期作)を所蔵しています。境内は広く、とてもよく手入れが行きとどいている様子。訪れたときも、庭師さんたちが植木の剪定作業をしていました。
住宅街を進んで、小沢城址への入口を探します。目の前に横たわる、こんもりとした森の中へ案内地図は導いているのですが、どこから入ったらよいのかわかりません。「ずいぶん前に行ったことがあるけれど、今はどうなっているのかしら」と、近所の人が道案内してくれます。ふと気がつくと、ナシ園の向こうにジェットコースター(8)。走行音と悲鳴がそのレールをくるりとなぞって、どこかへ行ってしまいました。
再び入った深い緑の中はぬかるみがあり、落ち葉ですべりやすい道。おまけに蚊に襲撃され、のんびりと森林浴……というわけにはいかなくなりました。足下に気をつけながらも、早足で歩く歩く歩く。写真を撮ろうと止まれば、顔や手に蚊、蚊、蚊! 空堀や土塁、物見櫓など自然の地形を巧みに利用して築いたとされる小沢城址(9)の広場に立つも、どこかへ伸びていく小道をめがけて、すぐさま歩き出します。
空がぽっかりと見える道に出て、やっとひと安心。行き着いたのは、穴澤天神社(10)でした。灯りがぼんやり灯る本堂の前で手を合わせた後、境内下にある洞穴へ向かいます。と、そこには、ペットボトルをいくつもかかえた人が3人。「4日に1回は汲みに来るね。この水でお茶やコーヒーを炒れると、味がぜんぜんちがうんだ」と、原付バイクのおとうさん。「御神水」と呼ばれるこの湧水は、平成14年の「東京の名湧水」に選定されたもの。「鉄分が多いんだよな」というとおり、洞穴の水面は赤茶けていました。
さて、おもわぬ蚊の襲撃で(?)、ルートをはずれてしまった多摩自然遊歩道さんぽ。これからまたあの深い緑の中へ戻るのは、どうしたものか……。ナシのお味も気になることだし、このまま三沢川に沿って、京王よみうりランド駅か稲田堤駅まで歩き帰途につくことにいたしましょう。
おさんぽクローズアップ!!
「川崎市フルーツパーク」
ナシの栽培試験用果樹園をはじめ、カキ、ウメ、ミカン、ブドウ、キウイ園や、バナナ、パパイヤ、スターフルーツなどが実をつける熱帯果樹温室があります。一般開放されており、憩いの場として人々が訪れています。
約50品種あるナシは10月中旬まで収穫、即売され、品種ごとの風味や味わいを楽しめます。即売は、原則として火・金の10時半〜。収穫状況によって臨時販売することもあります。
■044-945-0153
■川崎市多摩区菅仙谷3-17-1
■9時半〜16時(9〜3月)、9時半〜16時半(4〜8月)
■月(祝の場合は翌日休)、年末年始
■入場無料
「穴澤天神社」
孝安天皇4年創建、少彦名大神を祀り、後の元禄7年(1694)、社殿を改修した際に菅原道真公を合祀したと略誌にあります。
8月下旬の例大祭で奉奏される「江戸の里神楽」は国指定重要無形民俗文化財。毎年、多くの見物客でにぎわいます。
境内下にある洞穴は、「穴澤」の起源とされるもの。洞穴の横には、弁天様が祀られています。
■ 042-377-0055
■稲城市矢野口3292
※ 平成17年(2005)8月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
取材・文/森田奈央
森田奈央
日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。