第6回 生田緑地とその周辺を歩こう!
2005/06/151. 川崎市青少年科学館
2. 水溜まりや流れ
3. 川崎市岡本太郎美術館
4. しょうぶ池
5. 生田緑地内「ばら苑」(旧向ヶ丘遊園内)
7. おし沼砂礫層
8. 「輝け杉の子」像
9. 稲毛山広福寺
10. くらやみ坂
おさんぽ記
川崎市青少年科学館(1)は、生田緑地周辺の自然に関する資料を展示する本館とプラネタリウム館に分かれています。屋外に展示されているD51型蒸気機関車のまわりには、よちよち歩きの赤ちゃん連れやプラネタリウム見学の園児たち。だれもが気軽に訪れる場所です。
子どもたちの元気な声は周辺の水溜まりや流れ(2)にも響いています。「わぁー、釣れたー!」と棒につけたヒモで釣り上げられたのは、赤いザリガニ。「釣れた!」「釣れた!」と次々とあがる歓声に、写生をしていた老夫婦が手を止めて、「まるでクジラでも釣ったような騒ぎだね」と目を細めます。
奥の池では絶滅危惧種の「ホトケドジョウ」が保護されています。そのため、こちらでは動植物の採取は禁止。ホトケドジョウを見たい場合は青少年科学館の水槽で、または単発的に行われるイベントで観察できます。
昭和46年(1971)、科学技術庁が中心となって行った崖崩れの実態調査の実験により多数の被害者が出た「ローム斜面崩壊実験事故」。その慰霊塔(右写真)の前で手を合わせ、先にある大階段へ進みます。一歩上るごとに目の前いっぱいに見えてくるのは、川崎市岡本太郎美術館(3)のシンボルモニュメント「母の塔」。躍動感に満ちあふれた姿に圧倒され、おもわず口をぽっかりと開けて見上げてしまいます。
さて、生田緑地ではさまざまな花が見頃を迎えていました。しょうぶ池(4)には黄ショウブが色鮮やかな花を咲かせ始め、少し足を伸ばしたばら苑(5)には甘い香りが充満。「250人のボランティアが毎日交代で夏のあいだも草取りをします。自分たちが世話をしたばら苑をみなさんに見てもらえるのはとても嬉しいですよ」と、ばら苑のボランティアの人がにっこり笑います。4000株以上ものバラたちが繰り広げる見事な競演、次回の秋の公開が今から楽しみです。(春の公開は終了)
ばら苑からバス停「おし沼」まで行ってUターンし、おし沼の切り通し(6)を歩きます。「15年くらい前まではクルマが2台すれちがうのもたいへんなくらい細かったし、舗装もされてない砂利道だったんだ」と近所の人。「山と山を割いて造られた道だからね、いまだにタヌキが出てくるって言うよ。確か『おし沼砂礫層』を見られるところがあったはずだな」。
青少年科学館本館にあった「川崎の台地ができるまで」の展示を見ているとき、こんな説明を聞きました。「おし沼砂礫層(7)とはおし沼で見つかった地層で、約30万年前の海進によって堆積されたものです。砂と石が層になっているのが特徴で、ミルフィーユのように重なった地層が枡形山へ行く山道の途中にもありますよ」。
さっそく枡形山への山道にて、段々になった茶色のおし沼砂礫層を発見。ざらざらとした表面に触れてみたら、砂がぽろぽろとはがれ落ちます。このなかに昔々からの記憶が閉じこめられているかと思うと、壊してはたいへんと、あわてて手を引っ込めました。
枡形山広場の「輝け杉の子(8)」像に向き合った後、枡形山展望台にエレベーターで上り、四方を眺めます。眼下に広がる生田緑地の緑のじゅうたん。蓄積されてきたさまざまな歴史がここには残されているんだなぁと、改めて思います。
小田急線の線路へ向かって坂を下りていくと、稲毛山広福寺(9)がありました。平安時代に創建され、鎌倉時代に枡形城を本拠地とした稲毛三郎重成によって中興された寺。なるほど、ここにも積み重ねられてきた1つの歴史。と、そこから下りた坂の名前はくらやみ坂(10)。生い茂っていた木がいつしか伐採され、今では明るい坂。新しい歴史も次々と重ねられます。
おさんぽクローズアップ!!
「川崎市青少年科学館 プラネタリウム館」
昭和46年(1971)開館。月替わりの一般投影と学校団体投影が行われています。
従来の投影機に合わせて、多摩区在住のプラネタリウム製作者・大平貴之さんが開発した投影機「メガスターⅡ」を公開。
今までのプラネタリウムが映し出す星の数は2〜3万個。それに対して、メガスターⅡはなんと410万個を投影。さらに、現在まで4台製作されたうち常設されているのは、ここと日本科学未来館(江東区)だけと、話題が話題を呼び、現在、来館者が急増中。
■044-922-4731
■川崎市多摩区枡形7-1-5(生田緑地内)
■一般投影は平日(火〜金):15時〜、 土・日・祝/夏休み/冬休み/春休み:10時〜(子ども向け番組)、12時〜、13時半〜、15時〜(各45分間)。
■月、年末年始休館、年4回点検日あり
■入館料 大人200円、高校生・大学生100円、中学生以下・65歳以上(要証明書)無料
「川崎市岡本太郎美術館」
川崎市に生まれた岡本太郎のエネルギッシュな作品の数々を常設展示。
館内のいたるところに設置されたモニターでは、岡本太郎という人となりを知る、さまざまなパフォーマンスが展開されています。大きなキャンバスに向かって、迷うことなく絵筆を力強く踊らせ、1枚の絵を仕上げていく様を追った緊迫の映像は、時を忘れて見入ってしまいます。
企画展やイベントなども行われ、カフェテリア、ショップを併設。
■ 044-900-9898
■ 川崎市多摩区枡形7-1-5(生田緑地内)
■ 9時半〜17時(入館は16時半まで)
■ 月、祝の翌日(土・日を除く)、年末年始休館、臨時休館あり
■ 観覧料 常設展のみ開催時 大人500円、高校生・大学生300円、企画展開催時は展覧会によって異なる
※ 平成17年(2005)5月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
取材・文/森田奈央
森田奈央
日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。