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おさんぽ通信

    第4回 黒川駅~はるひ野駅を歩こう!

    2005/04/15

    1. 小田急多摩線黒川駅
    2. 黒川青少年野外活動センター
    3. 農産物直売所
    4. 火の見やぐらと半鐘
    5. 谷戸
    6. 山桜の巨木

    7. 展望広場
    8. 毘沙門天堂
    9. 汁守神社
    10. 立川さん家のビニールハウス
    11. 新興住宅地
    12. はるひ野駅

    おさんぽ記

    現在リニューアル工事中の小田急多摩線黒川駅(1)南口を出発。工事車両が通り過ぎるのを横目に、ブナ科の常緑樹マテバシィの並木が続く坂道を下ります。

    信号を渡った左方向に、川崎市黒川青少年野外活動センター(2)の案内板。促されて行った途中の階段には、「散策路」と書いてありました。「散策路を行くと東屋が建っていて、そこで鶴川街道へ出る道と、栗平への道に分かれるんですよ。私も栗平へ行くときはよくこの散策路を利用します」と、野外活動センター所長の吉澤さん。自然に囲まれた散策路には多くの散歩の人が訪れるそうです。

    来た道を引き返し、黒川農産物直売所(3)をのぞきます。あいにく営業日でなかったため、店舗にはだれもいません。看板に手書きされた「九時三〇分頃開店」の「頃」という文字を見て、おもわず頬がゆるみます。リュックサックを背負ったご夫婦がやって来て、「以前、友だちからここで買った京野菜をもらったの。先日来たときはいろいろな種類の野菜がたくさん並んでいたけど、今日は休みだったのね」。地元でとれた新鮮野菜が並ぶ直売所はリピーターが多いとのことでした。

    鶴川街道を曲がったところにあった消防団の建物の横に、火の見やぐら(4)を発見。おさんぽ通信第3回の中野島でも火の見やぐらを見つけましたが、高い梯子の上にぶら下がった、この半鐘は現役の様子。「近隣で火事があると、鐘が鳴らされますよ」と、通りがかりの女性が教えてくれました。

    黒川は谷戸(5)の風景が広がるところ。新緑の頃になれば、見渡すかぎり鮮やかな色に包まれ、いきいきとした表情を見せてくれるでしょう。梨畑に立っている作業服のかかしが、作業をしているほんとうの人のように見え、うまく作ったもんだなぁと感心しました。

    丘の急な坂をぐんぐん上っていき、身体が少し汗ばんだ頃、左手の斜面に大きな古い巨木があることに気づきます。そばに近づいてみると、「樹齢400年山桜(6) 川崎市保存樹林」の表示。ごつごつとした太い木肌には苔がびっしりと生えていて、この木が長い年月をここで過ごしてきたことがわかります。

    坂道の突き当たりは、市水道局黒川配水池の敷地。行き止まりかなと見れば、閉じられた門の左手へ熊笹に覆われた細い山道。どこに通じるんだろうと不安な気持ちで進むと、バイクにダイコンとネギを積んだおじいちゃんがひょっこり。人気のない道での突然の出会いに、お互いびっくり。「そこの畑で作業していると、散歩の人に道を聞かれることがあるよ。道案内の看板を立ててやろうかと思っているんだ」。そして、おじいちゃんに教えてもらった展望広場(7)へ。目の前に広がった景色に、おもわず「わぁー!」。

    再び谷戸へ戻り、毘沙門天堂(8)を訪れます。「七福神の毘沙門天が祀られているから、縁起がいいよ。よーく拝んでおいで。石段を下りるときは足下に気をつけるんだよ」と、にこにこ顔のおばあちゃん。娘さんのところでお茶を飲んできた帰りだと話して、家の中へ入っていきました。

    黒川公会堂の中では両手に鳴子を持ち、民謡に合わせて踊るおかあさんたち。その隣りには汁守神社(9)。境内に植えられたやぶ椿は川崎市の「まちの樹50選」に選定されていて、2月頃、木全体に赤い花を咲かせます。

    1年中花の香りでいっぱいなのは、立川さん家のビニールハウス(10)。色とりどりの花々が訪れる人を元気に迎えてくれます。少しおじゃまして、苗の手入れをしていた奥さんと立ち話。「宅地の造成工事が行われて、黒川はずいぶん変わりましたね。開発の手が入るのは寂しさもあったけど、若い人たちが住むようになって活気が出た。黒川に子どもの声が響くようになったんですよ」。

    新興住宅地(11)は輝かしい未来を想像させてくれます。新しい通りに新しい家、新しい公園の遊具……。たくさんの自然と古きものが受け継がれてきた黒川に、新たな街の息吹。さまざまな要素が共存する街へ発展することを願い、04年12月に開業したはるひ野駅(12)へと向かいました。

    おさんぽクローズアップ!!

    「川崎市黒川青少年野外活動センター」

    子どもたちが自然の中で野外活動や集団生活を体験できる施設。宿泊室、屋外炊事場、グラウンド、工作室などがあり、川崎市内の青少年団体が宿泊、または日帰り利用できます。

    緑に囲まれたグラウンドには遠足の園児の姿が見られるほか、よもぎ団子を作ったりシイタケの駒打ちをしたりする「親子自然教室」や、竹とんぼやベイゴマで遊んだり昔のおやつを作ったりする「子ども体験教室」などの行事が行われます。柿生小学校黒川分校の跡地であるため、卒業生が行事を手伝うこともあり、多くの人に支えられている場所です。


    ■ 044-986-2511
    ■ 川崎市麻生区黒川313-9
    (行事は、市政だよりや市民館・こども文化センターなどに置いてあるチラシで案内)

    「立川さん家のビニールハウス」

    11〜4月はパンジーやヴィオラ、5〜10月はペチニアやサルビアを中心とした花の苗が各種そろっています。「皆さんに自由に入って見てもらっています。もちろん買うこともできますよ」というお話で、近隣の人々は気軽に訪問。

    腐葉土と肥料をまぜて作られた土は、「苗には土がいちばん大事」と、こだわったもの。その土に植えられた立川さん家の苗は、根の張り方がちがうといいます。確かに、花1本1本がぴんっと勢いがいい! 1苗80〜100円。野菜の苗もあります。


    ■ 044-988-1069
    ■ 川崎市麻生区黒川1328

    ※ 平成17年(2005)2月にお散歩しました。料金などの各情報は変更になる場合があります。
    取材・文/森田奈央

    森田奈央

    日ごろ見過ごしがちなものを散歩しながら発見することに胸おどらせるおさんぽライター。散歩途中で猫と出会うことも大きな喜びとし、著書に「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)がある。