第28回 巻蒸(けんちん)(大分県中津市)
2015/09/26
一見、和食のゼリー寄せかと思えるが、大分県中津に200年前から伝わる郷土菓子。中津市にある渓谷、耶馬溪(やばけい)の山野で採れるキクラゲ、銀杏、十六豆に葛粉、小麦粉、砂糖を混ぜて蒸した棹もので、慶弔用には欠かせない品という。お菓子にキクラゲとは驚きだが、口に運ぶと葛粉のほどよい弾力とキクラゲのコリコリした食感、豆の柔らかさが楽しめ、控えめな甘さと一体となって見事なハーモニーを奏でる。
由来は中国伝承の巻蒸卓袱(しっぽく)料理から。この地方の医師で書家の田信翁が長崎遊学の際に食した料理に創意を加えてできたといわれる。ゆでた具材に砂糖と葛粉を加えて練り、さらに小麦粉を加えて粘りを出す。セイロで蒸したら、常温になるまでじっくり冷ますのがポイントだ。添加物は一切使っていない。同店の先代が昭和46年に大分県土産新作展に出品したところ大分県知事賞を受賞するなど、受賞歴も多い。安心安全のおやつは珍しいお土産としても人気。レンジで1分ほど温めると、一層おいしさが増す。
甘味本陣 本店
0979-24-2535
大分県中津市古魚町1689
営業時間/9時30分~17時
定休日/日曜
巻蒸 1本800円