第77回　名物かまど（香川県坂出市）

　ふっくらとした可愛らしい形は塩を炊くかまどを模したもの。古くから塩づくりで栄えた讃岐ならではの名物菓子だ。奈良時代の高僧・行基が瀬戸内の浜辺でかまどを用いた製塩法を伝えたことに因んで創製された。
　卵を溶いた生地で黄身餡を包んだ饅頭だが、この黄身餡が美味。厳選した大手亡豆（おおてぼうまめ）を使った生餡に県内産の卵の新鮮な卵黄のみを混ぜて炊き上げる。生地にも餡にも卵が入っているので風味がまろやか。歯を当てるとほろっと皮が崩れ、黄身餡の柔らかで優しい甘みが広がる。くぼみの部分が崩れないよう、かまど形に整えるのが難しいという。
　どこか懐かしい味は地元だけでなく全国にもファンが多い。お茶はもちろん、コーヒーや紅茶、牛乳とも好相性。お客さんがいろいろな楽しみ方を教えてくれるとか。創業は1936年。ほかに「かまどパイ」や「田舎家」など多くの和洋菓子を取り扱う。地元出身で風刺漫画や絵画などで活躍した和田邦坊デザインによる包装紙やパッケージも洒落ている。