第71回　二十世紀（鳥取県鳥取市）

　鳥取の名産といえば二十世紀梨。栽培開始から百年以上の歴史を持つが、天災や黒斑病などにより幾度となく危機的な状況に陥ったという。そんな梨を全国の人たちに知ってもらおうと作られたのが銘菓「二十世紀」だ。慶応4（1868）年創業の老舗菓子店「亀甲や」が大正11（1922）年に創製。水飴と砂糖、寒天を固めた生地で梨の輪切りの姿を再現したゼリー菓子だ。
　精選した材料を混ぜて円筒状の型に入れ固めたら、翌日に中身を出して薄くスライス。一枚一枚、手作業で種のように穴をあけるというから驚く。よく見ると、その穴の位置など表情が一枚ずつ違うのも、味わい深い。最後に粉を振って乾燥すれば出来上がり。独特の製法は創製以来変わらない。
　透けるような肌艶とキラキラと輝く透明な断面が梨のみずみずしさを醸し出す。モチッと柔らかい食感で歯切れがいい。梨の果汁は入っていないが、上品な甘みとほのかな香りが梨の風味と季節感を感じさせる。夏は冷凍してもおいしい。