先の予測が難しいこれからの時代を生きていく今の子どもたちに、私立中高一貫校ではどんな教育が行われているのかを取材。そのユニークな取り組みをコラム連載で紹介する。
グローバルな探究授業で生徒が各国の大使に!? ④
2学期に入り、「全国連大使が同じ弁当を食べるとしたら?」という架空の「国連弁当」を議題に、生徒たち扮する各国大使がメニュー作りや他国との交渉に臨んでいる。国連総会では、10カ国が集まらないと議題案を提出できないため、大使たちは自国の主張を通しつつ、ときには他国の事情を取り入れ、「仲間」を増やす必要があるのだそうだ。
授業中に他国の大使団を訪れ、お互いの理念について意見交換を行う。ときには大使同士の火花散る対話も。「うちの国の主食は変えられないけれど、理念は近いからそちらの国のデザートをうちの国でも作ることにしよう」といったやりとりが見られた。主張するところは主張しながら、譲るところは譲る。仲間を作っていく上では交渉術も必要なのだ。南スーダン大使は「何度も意見が食い違いそうになりましたが、貧困と環境問題の両方を解決するためのグループが組めて良かったです。アフリカ以外の国とすぐに手を取り合えたのは意外でした。楽しかった!」と感想を語ってくれた。
また、各国大使団は、クラス内だけでなく学年全体70か国の政策についても情報収集をはじめた。国連総会で他国と連携して自国の理念を広げていくには、全体を見渡す視点が必要不可欠だ。担当教諭は「交渉がはじまり、各大使たちからは爆発的な熱量を感じました。授業時間が終わっても交渉が止まらないのには驚きました」と話す。12月の探究発表会では、「国連弁当」で全会一致のメニュー成立を目指す。大使たちの闘いは佳境を迎えている。
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取材協力:桐蔭学園中等教育学校
横浜市青葉区鉄町1614
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