先の予測が難しいこれからの時代を生きていく今の子どもたちに、私立中高一貫校ではどんな教育が行われているのかを取材。そのユニークな取り組みをコラム連載で紹介する。
グローバルな探究授業で生徒が各国の大使に!? ③
2学期の授業では、「国連弁当」を議題に国連総会の形式を学んでいく。「国連弁当」とは、全国連大使が同じ弁当を食べるとしたら…という架空の設定の弁当。込めたい理念とメニュー(主食・主菜・副菜・デザートから選択)を、国連総会の形式で話し合う。宗教で禁じられている食材などもあり、一筋縄ではいかないことから自然と議論が生まれる。
今回の授業では、担当国の立場から、各国大使が具体的なメニュー案を発表。担当教諭は「世界全体で目指す会議理念と自国の国益、この2つを同時に満たすメニューを作ることが目標。グローバルな視点で世界の未来を考えた上でローカルな視点に戻る、その難しさに直面する授業です」と話す。
チャド大使や南スーダン大使は主食を選択。世界の中でも貧しい国の1つであるチャドでは米が手に入らない。そのため、雑穀を煮込む「ミレット」という料理を提案している。特産品に誇りを持つコートジボワールやカナダはデザートを提案し、前者はカカオ、後者はメープルシロップを使ったメニューを発表。各国の大使たちは、知恵をしぼりアイデアを出し合いながらメニューを考案していく。それぞれの国の特徴が出ていて興味深い。
授業の振り返りでは早速、「自分とは違う立場で考えるのは本当に難しい」「楽しいお弁当企画かと思っていたのにすごく本格的な探究…」と生徒たちから苦悩の声が上がる。
12月には国連総会の形式で「国連弁当」のメニューが決定する。議論の末に「全会一致」で全員が納得できる結末を迎えることができるのか。大使たちの奮闘は続く。
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取材協力:桐蔭学園中等教育学校
横浜市青葉区鉄町1614
TEL 045-971-1411(代表)
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