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特 集

    先の予測が難しいこれからの時代を生きていく今の子どもたちに、私立中高一貫校ではどんな教育が行われているのだろうか。新カリキュラム「6年間のロードマップ」が発足5年目を迎える桐蔭学園中等教育学校。一貫教育ならではの方針について取材し、コラム連載で紹介する。

    6年一貫の教育で「生きる力」をじっくり養う③

     2023年度の連載①では、先の読めない時代を生き抜くために、桐蔭学園中等教育学校では6年一貫の教育で「生きる力」をじっくり養っていることを紹介。続く連載②では、1・2年次の「出会う」ステージでの「他者とつながる」活動である通称「メンター/メンティー」プログラムを取り上げた。

     3・4年次は「深める」ステージと位置づけられ、「経験を通して社会を知る」活動を重視している。その具体的なプログラムが、4年次に行う「アカデミックキャンプ」だ。

     「アカデミックキャンプ」とは、大学の研究室を訪問し、教授や大学院生などと一緒に研究テーマに関する実習体験などを行うプログラム。2022年度に始まり、今年度も横浜市立大学、東京都立大学、早稲田大学、国際基督教大学などのもとを訪れ、大学の研究を体験した。

     2023年度は、新たに金沢医科大学での「アカデミックキャンプ」がスタートし、医学に興味・関心を寄せる4年生28名が参加した。内容は、金沢医科大学のカリキュラム・授業紹介、「細胞培養と遺伝子解析の体験実習」、「術衣装着体験と呼吸音聴診」、医学部教授による模擬講義など。医学を志す生徒にはうってつけの内容だ。

     「細胞培養と遺伝子解析の体験実習」では、実験や装置が実際にどのように医療現場で活用されているかを体験。参加した生徒は大きな刺激を受けた。学校で学んでいる生物の授業内容が、この先大学でどのような研究につながるのかを具体的に知ることができ、大きな動機づけとなっただろう。

     「術衣装着体験と呼吸音聴診」では、手洗いのみならず、術衣をいかに汚染させずに着るかなど、手術を取り巻く隠れた技術や、医療に関わる仕事の背景を知ることができた。

     聴診器の実習での「どんなにICT(情報技術)が発達しても、聴診器で病気を推測できる力は、初期医療でとても重要」という教授の言葉に、生徒も真剣な表情。生徒のひとりは「聴診器の実習は貴重な経験。医師がいかに微細な音を聞いているのかがわかり、医師が命と向き合うというのはこういうことか」と感心した様子だった。

     模擬講義では、「見ると、観る」の違いについて、レーウェンフックの顕微鏡で見た精子の話を例にとった病理学の授業を受講した。「私たちは、知っているものしか見ることができない。同時に、常に既存の知識・概念は疑ってかからなければならない。それが研究というものだ」と、山田教授。

     この「アカデミックキャンプ」では、学校を飛び出して外の世界に触れ、今の自分と大学、社会へのつながりを意識するという意図がある。参加した生徒たちは、学校外の環境に身を置くことで、現在学んでいることがどのように大学や社会につながるのかを知り、進路選択の指針となる気づきを得たことだろう。


    • 遺伝子解析実習の様子

    • 術衣装着を体験 生徒たちも身が引き締まる思い

    • 耳をすませ、呼吸音を慎重に聴診する

    • 参加した生徒たちにとって、
      「経験を通して社会を知る」貴重な経験となった

    過去の連載はこちら

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    取材協力:桐蔭学園中等教育学校

    横浜市青葉区鉄町1614
    TEL 045-971-1411(代表)
    https://toin.ac.jp/ses/


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