先の予測が難しいこれからの時代を生きていく今の子どもたちに、私立中高一貫校ではどんな教育が行われているのかを取材。そのユニークな取り組みをコラム連載で紹介する。
データサイエンスを学び、活用!③
横浜市内の中高一貫校で行われているデータサイエンスを中心とした探究授業「16歳のサイエンスチャレンジ」。同校の教育の柱の一つである探究授業「未来への扉」の4年生(高1生相当)の授業で、次世代を見据えた意欲的なプログラムだ。
6月末、いよいよ「16歳のサイエンスチャレンジ」は授業最終回のプレゼンテーション大会を迎えた。データサイエンスのプロセスである「課題設定→調査・計画→仮説立案→データ収集→分析→結論」に沿ってグループごとに発表を行った。以下、プレゼンテーションの一部を紹介する。
「今回の課題は『学園祭の来場者を増やすためにはどうしたらいいか』です。調査はロイロノート・スクールというアプリでアンケート調査を行いました。私たちの仮説は、学園祭の来場者の中で『在校生の同世代である高校生の来場者が少ないのではないか』というものです。データ収集のためにクラスでアンケート調査を実施しました。内容は『あなたは他校の知り合いを学園祭に招待したか(何人招待したか)、また、何を使って招待したか』です。結果は、「招待しなかった」と回答した人が23人もいました。1人~3人を招待した人が6人、4人以上を招待した人が2人でした。また、招待すると一定の割合で来てくれることもデータから判明しました。大半の人がSNSを使って招待していて、少数の人が口頭で招待していました。以上のデータから、他校の知り合いにSNSを使って学園祭の招待を送ることで、来場者を増やすことが可能なのではないか、と分析します。この結果をうけて、今年の学園祭では在校生全員がなるべく多くの知り合いを招待するキャンペーンを提案したいと思います。以上、発表を終わります」
よどみない発表と明快な分析に拍手がわく。同校が授業の根幹とするアクティブラーニング型授業の成果が存分に発揮されていた。どのグループもスライド資料を駆使して充実した発表を行っていた。
担当の杵村教諭は「生徒たちは自分たちが収集したデータと真摯に向き合い、多角的なデータの読み取りに挑戦していました。世の中にあふれる情報に踊らされるのではなく、自分で判断する力を身につけ、データを思考の材料にしてほしい。データ分析を体験し、一歩踏み込んだ見方ができるようになったのは大きな収穫です」と振り返った。この先進的な取り組みが、次年度の探究学習の最終形となる「論文執筆」にどう活用されていくか、今から楽しみだ。
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取材協力:桐蔭学園中等教育学校
横浜市青葉区鉄町1614
TEL 045-971-1411(代表)
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